密接な関係にある他国から

アメリカと日本の社会、文化、日常感覚など、下から目線でつなげてみる。

世界が呆れる東京五輪:Newsweekが特集

質の低下が噂されるNewsweekであるが、けっこう読んいる元CIAのグレン・カール氏のコラム。今回は東京五輪についてだ。彼の意見は概ね(選挙の時のブタジェッジ推しは度が過ぎていたが)筋の通ったものだ。この記事でも、はっきりと中止すべきと結んでいる。

<日本政府は五輪への投資を回収しようと躍起になり、虚栄心を満たそうとし、楽観的過ぎる期待を抱いているが、開催で失われる人命の「損害額」は経済的な波及効果を大きく上回る>


陸上の100メートル走は、何人分の命の価値があるのか。あるいは、ブルガリアとマレーシアの選手のレスリングの試合は?


日本政府は今のところ、東京五輪開催による経済的・社会的利益は、そのせいで失われる人命より価値があると考えているらしい。だが1984年のロサンゼルス大会を除けば、過去の五輪の多くは赤字だった。


新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)の最中に五輪を開催することの経済的・人的コストは、政府が想定する長期的利益を上回ると予測されている。


五輪開催は日本の医療システムに負荷をかけ、場合によっては崩壊させる可能性すらある。そうなれば、本来なら生きられるはずの人々を数多く死なせることになる。


開催国の政府は常に五輪によって自国のイメージが向上すると考える。開催国は2週間にわたり世界中の注目を集め、自国の文化・経済・社会をアピールして世界の主要国の仲間入りができる。


選ばれし国だけが五輪を開催できる、という理屈だ。


2008年に北京五輪を開催した中国政府は明らかにそうだった。1989年の天安門事件で1万人とも言われる自国民を虐殺し、個人や少数派の権利を抑圧して共産党の権力を維持した冷酷な独裁国家──中国はそんな負のイメージに対抗して、モダンな大国に成長した姿を示そうとした。


「オリンピック株」が発生?
1936年ベルリン大会のナチスドイツから、自由市場経済と個人の人権をアピールした1984年ロサンゼルス大会のアメリカまで、どの国も五輪をナショナリズムのために利用してきた。


だが国家の評価を決める尺度は、国際的イベントをどれだけうまく開催できるかではない。その国の社会システムや経済力、国民の思想・行動の自由度、幸福度だ。


政府が想定する国威発揚効果は、五輪の競技と華やかなイベントが事実と真実から目をそらす以上には長続きしない。


北京大会のメインスタジアムとして使われた通称「鳥の巣」は、確かに壮麗な建築物だった。しかし、中国のイメージを決めるのは経済力だけではない。香港の民主派に対する弾圧や、習近平(シー・チンピン)国家主席がくまのプーさんに似ていると言っただけで投獄される強権体質も重要な要素だ。


1984年ロサンゼルス五輪はアメリカのアスリートにスリリングな愛国的勝利をもたらしたが、世界は成功の機会と深刻な銃犯罪が同居するアメリカの現実をよく知っている。


それでも古代ローマのコロシアムから北京の「鳥の巣」まで、国威発揚を目的とする壮麗な見せ物にはあらがい難い魅力がある。


同様に五輪開催国の政府は、必ずと言っていいほど経済効果を強調する。


日本の試算は恐ろしいほど楽観的だ約3兆円とも言われる投資に対し、直接的な波及効果だけで5兆円。長期的効果は27兆円に上り、194万人の雇用を創出するという。


安倍晋三前首相と菅義偉首相は、何十年も低迷が続く日本経済の活性化を五輪開催に期待した。


だが100年に1度のパンデミックは、その期待を打ち砕きかねない菅は五輪開催による公衆衛生上のリスクと経済効果を比較検討する必要に迫られている。


日本の五輪投資は、純然たる赤字に終わる可能性がある。


実は、スポーツの試合を行うことにどの程度の経済効果があるかは疑わしい。


プロスポーツチームは、地元に追加の経済生産を生み出さないと言われている。野球観戦する人はスタジアムでホットドッグを買うかもしれないが、もし地元に野球チームがなければ人々はほかの娯楽や外食にその金を使っていただろう。


五輪関連のインフラ投資には経済効果があるとしても、開催国はそれと引き換えに、長年にわたり莫大な債務を抱える場合が多い。それよりは、国民全体のためのインフラ整備に投資するほうが効率的だ。


1976年に夏季五輪を開催したカナダのモントリオールは、五輪関連の負債を返済するまでに30年を要した。結局、五輪が残した競技場などの施設はあまり活用されず、莫大なコストばかりが垂れ流された。


幸い、日本はこれまで新型コロナの打撃が比較的小規模に抑えられている。人口100万人当たりの死者数は100人余り。1800人を上回っているアメリカに比べれば、はるかに少ない。


しかし、五輪が開催されれば大勢の人が東京を訪れて競技場や飲食店に集まる。一方、本稿執筆時点で日本のワクチン接種の完了率は3%余りにとどまっている。


人が集まるとウイルスの感染が拡大するという点で、疫学専門家の意見は一致している。


コロナ禍の長期化に伴い、既に日本の医療は逼迫していて、五輪開催によって感染が拡大すれば「医療崩壊」に陥ると、東京都医師会は警鐘を鳴らしてきた。東京五輪をきっかけに「オリンピック株」とでも呼ぶべき新たな変異株が生まれかねないと恐れる専門家もいる。


開催の代償はあまりに大きい
五輪が日本の新型コロナ感染状況にどのような影響を及ぼすかについて、正確な推計は不可能だ。


そこで控えめな計算をして、五輪閉幕後の1カ月間、(感染が爆発的に広がることは避けられて)5月前半とほぼ同水準の1日7000人程度の新規感染者が発生すると仮定しよう。


この場合、1カ月間の新規感染者の合計は21万人。日本の医療体制は極度に逼迫するだろうが、「崩壊」までは行かないかもしれない。


しかし、新型コロナの致死率は約2%と言われているので、1カ月間で4200人が死亡する計算だ。


米政府は、さまざまな分野で安全性に関する規制を設ける際の基準にするために、複雑な計算式に基づいて人命の価値を約1000万ドルと算出している。


これに従えば、1カ月で4200人が死亡した場合、約420億ドルの損失という計算になる。


五輪閉幕から2カ月目、1カ月の死者数が2100人に半減するとしよう。その場合には五輪閉幕後の人命喪失による損害は、わずか2カ月で合計630億ドル相当ということになる。


このように命の価値を金額に換算するという不愉快な計算をするまでもなく、五輪開催のコストが社会的・経済的な利益を大きく上回ることは明らかだろう。


もしこのまま五輪を開催すれば、日本と世界で非常に多くの人が(本来ならば失わずに済んだはずの)命を失うことになる。


日本政府が五輪への投資を回収しようと躍起になり、虚栄心を満たそうとし、国の経済生産を押し上げられるという誤った期待を抱くことの代償として、そのような結果がもたらされるのだ。


私は五輪を観戦するのが大好きだし、若い頃からスポーツを愛好してきた人間だ。それでも、何千人もの死者を出してまで陸上短距離やレスリングの試合を行う価値はない。


東京五輪は中止すべきだ。


(※日本の常識は世界の非常識だった――。本誌6月15日号では、パンデミック五輪に猛進する日本の現状を総力特集。仏リベラシオン紙東京特派員がリポートする、五輪貴族と国民の「格差」や、海外記者が五輪中に監視を振り切る「抜け穴」とは)



カール氏の見解は真っ当そのもの。元CIAでなくても多くの普通の人がそう考える。それができない日本政府。そして、この日本政府の楽観と強行を、仏リベラシオン紙東京特派員が五輪貴族と国民の「格差」や、海外記者が五輪中に監視を振り切る「抜け穴」などの視点からもリポートする。日本に住んでいない人にとっては大変興味深い、ある意味の滑稽劇であるが、日本に住む人にとっては、滑稽では済まされない。そして今度は日本から、ワクチンの行き届いていない国へ感染を広げる可能性もある。そうなれば全世界的悲劇になる。


政府は、通常2週間の自己隔離期間を”0日”で済ませる方法を、来訪者にレクチャーのテキストを配布。ご丁寧に例文もつけている。至れるつくせりの危険で無責任なおもてなしだ。
これを追求したのが6月9日衆議院文科委員会での斉木議員質疑だ。

YouTubにはまだ上がっていないので、ぜひ審議中継でご覧ください。ほんとびっくりします、この政府の楽観というか杜撰さは。世界から変異種が集い、ワクチン接種していない日本の人々の間でパンデミックを起こす。

大会組織委員会が衝撃のカンニング奨励だ。東京五輪・パラリンピックの水際対策を巡り、9日の衆院文科委員会で究極の“おもてなし”が発覚。入国後は原則「14日間隔離」なのに、「隔離0日」が続出しそうなのだ。


 独自入手した「本邦活動計画書」と題する組織委の内部資料を基に追及したのは、立憲民主党の斉木武志議員。日本入国の際、選手や大会関係者は「計画書」を組織委に必ず提出。期限は入国4週間前まで、本人情報はもちろん、宿泊場所や移動手段の記載を課す。


 驚くのは、計画書の「留意点」だ。入国者に隔離期間を①14日②3日③入国直後から活動――の3パターンから選択させた上で、①②を行えない理由の例として〈下記を参照してください〉と誘導。〈入国後すぐに活動を始める必要があり、不在の場合、運営に重大な支障をきたす〉〈アスリートのコンディションの維持・もしくはそのサポートのために、入国後すぐに活動を始める必要がある〉などと回答例を教示している。


 まるで「テスト用紙に模範解答を一緒に書いているようなもの」(斉木)で、「(入国者が例文を)コピペしているのではないか」と問われた組織委の布村幸彦副事務総長は、「例を踏まえて記載していただいている」と白状した。


五輪貴族に大サービス
 一方、丸川五輪担当相は「(理由に)具体性のないものははじく」と断言したが、実態は真逆だ。テスト大会などで4~5月に入国した2003人のうち55%が「隔離0日」、30%が「3日」。計85%が「14日」の原則免除とは「無条件でいらっしゃい!」と言わんばかりだ。


 マラソンのテスト大会(札幌市)を先月5日に視察した五輪貴族のセバスチャン・コー世界陸連会長も、ご多分に漏れず「0日」サービス。既に5月にはパラアスリート介助者のスリランカ人女性が入国4日目に陽性と判明。彼女もまた「0日」だったのに、丸川氏の見直す気配も「ゼロ」。


 終始「その国(日本)に入りたければ、その国のルールに従ってもらうのは当然」などとドヤ顔だったが、本番で「五輪貴族」の入国を「はじく」気概を見せるとは思えない。 


丸川大臣、この人とだけは友達になれないというタイプの女性。なぜ人気があるのかわからない、いやおじさんはこういう人好きなんだろう。異性に好かれ同性に嫌われるタイプ。 極右でもファザコン稲田朋美・オロオロ答弁の森昌子両氏の方が、まだ人間味がある。


丸川大臣のスタイルは、強い言い切りと、慇懃無礼 である。まるで質問者がバカで、失笑をこらえて、ご説明いたします、という態度が顕著だ。ただ斉木議員には彼女の魔力?は通じない。このしれっと強気の丸川大臣の答弁を、虚偽答弁です、と断じた。


斉木議員は、議論の切れ味が鋭くまた英語がすごく堪能なのだろう。英語で書かれた指示書を流暢に読み上げる。超訳ごまかしは通用しない。とても頼もしい。いい意味での立憲民主党の議員だ。


また丸川大臣の、きっぱり決然とした発言を、現実に行えば、大きな混乱をもたらし、IOC関係者の多くが開会式に出席できなくなり、GPS追跡も、単純に部屋に置いて出かければ、どう確認するのか、など、決然とした拒否・ルールの行使は不可能であると具体例を持って示した。


今国際世論も、中止はやむを得ないだろう、いや中止すべきだと動いている。今回のことでくすぶっているIOCへの不満や不信も表に出てきている。アジアの小国の内政など、そう深く興味も持たれなかったのだろうが、今回のことで、日本政府の頭の硬さ、無能さ、棄民政治にも注目が集まっている。


残念ながらここでは、Newsweek6月15日号日本語版を手に入れるには、困難だ。
電子版に、仏リベラシオン紙東京特派員がリポートが掲載されるのを期待している。


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