密接な関係にある他国から

アメリカと日本の社会、文化、日常感覚など、下から目線でつなげてみる。

”コンビニからエロ本が消える”のは思想統制の始まり?表現の自由とは?

リテラはいつも鋭く権力批判を展開し、立派だと思っているが、これはどうだろう?
”表現の自由”という問題を当てるにはいささかピント外れと思うのだが。

2020年、東京オリンピック・パラリンピックを機にコンビニからエロ本が消えるかもしれない──。五輪誘致の時にコンビニに並ぶエロ本を見て「IOC視察団が顔をしかめた」との噂から一気に広がった仮説だが、これが現実のものとなる可能性が高まっている。
日本ほど、ポルノを公共の場にごたまぜに開放している国は珍しい。「IOC視察団」でなくとも、先進国から来た人たちは非常に奇異に感じるだろう。


先月、千葉市はコンビニで販売されている成人向け雑誌をフィルムで包み、表紙の半分程度を隠す取り組みを予定していると発表した。まずは今夏をめどに、千葉市と青少年の健全育成などに関して包括連携協定を提携しているセブン-イレブン12店舗で実施。試行後に他の店舗でも実施するかどうか検討するとしている。
 この施策に関し、熊谷俊人千葉市長は「現状(の販売方法)は国際的な感覚に照らして疑問を持たれかねない。既に一定の配慮はされていると思うが十分ではない」と説明している。これに対し、日本雑誌協会は千葉市に協議を求める方針だという。
 実は、こういった施策は千葉市が初めてではない。つい最近にも先行する事例があった。昨年3月、大阪府堺市が市内にあるファミリーマート11店舗にて、中央部分を幅12センチの緑色のビニールフィルムで包んだ状態で成人雑誌を販売する試みを行っているのだ。このビニールで包まれると、雑誌の名前はかろうじて確認できるものの、表紙の大部分が隠されてしまううえ、立ち読みすることもできないので、読者は雑誌に何が掲載されているのかも分からない状態で購入せざるを得なくなる。売り上げへの影響は避けられない。また、巨大な緑色のビニールフィルムはかなり目立つので、これをレジに持っていくのはなかなか勇気がいる。そこで二の足を踏む客も多いだろう。
 これに対し、日本雑誌協会と日本書籍出版協会は連名で「憲法で保障されている表現の自由に抵触するのではないか。表紙は購入するか否かを決める重要な手がかり」として堺市側に対し公開質問状を送るも解除などは認められず、堺市は現在でもこの方式を市内全店に広げたい考えを示している。

ここで、表現の自由に抵触としているが、犯罪がらみでなく製作された作品を取り締まる場合はそうであるが、販売の場所を限定する、公の場合、不快を与えないようにカバーすることは別の問題と思う。


もし、自分の性器を晒す事が自己表現と考えている人が、街中で普通にその表現を行えば取りしまらざるをえない。その人の表現の自由を確保するために、多くの人の生活の快適が著しく脅かされる。


これを、独自のスペースで合法的に行い、同意した人々に表現を提供、共有した際に、取り締まりを受けた場合、ここで初めて表現の自由とは?と問われると思う。



周知の通り、これまでもコンビニにおける成人雑誌の販売においては自主規制がなされてきた。一般雑誌と分けた区分陳列に加え、2004年からは小口(見開き部分)にシールを貼り、店頭で本を開くことができないようにしている。
日本は未だ、ひどい男性優位社会だ。こういう点もそうだと思う。男性客(まあ女性客もいるかもしれないが)の買いやすさを優先し、そうした物に不快を感じる大方の女性客に我慢を強いてきた。私が日本にいた頃は、酔っ払ってコンビニでエロ本を立ち読みしている男性の側を通らなくてはならないのは、苦痛で、時として恐怖心を起こさせた。レンタルビデオ屋でも、アダルトコーナーがあるのだから、今でも十分な対処と言えない。


堺市が始め、千葉市もこれから運用しようとしている成人雑誌へのさらなる規制は現段階ではいまだ試運用の域を出ていないが、国際的なイベントの開催前に性風俗の分野に対して大規模な規制がかかるのはよくあることだ。出版ではなく、風俗店に関する事例だが、過去にはこんなケースも存在する。
〈これまで風俗業界は国際イベントの開催に合わせた警察当局の浄化作戦などで、地域丸ごと潰されるような例がいくつもあった。
 その中でも比較的新しく、かつ大規模だったのが、1990年に大阪市と守口市にまたがる鶴見緑地で開催された「国際花と緑の博覧会」(花博)の際の浄化作戦だ。
 それまでは、大阪市内にも少なくない数のソープランドがキタ、ミナミ両地域に存在していたのだが、花博の開催に合わせて警察が街の浄化作戦を開始し、大阪市内のソープランドへの集中的な摘発がなされ、さらに行政により条例も制定されたため、市内すべてのソープランドが閉店へと追い込まれた。現在、大阪市内に1軒のソープランドも存在しないのはこのためだ〉(吉岡優一郎『ベテラン風俗ライターが明かす フーゾク業界のぶっちゃけ話』彩図社)
 

子どもの教育に悪影響をおよぼすものが街から消えるなら、風紀を乱す不快なものが目に入らなくなるなら、エロ本がコンビニから消えようとどうでもいい──。そういう考えは一見もっともらしいし、表立って反対の声はあげにくい。
 しかし、そのような考え方は危険だ。漫画家のちばてつや氏は、エロ・グロ・ナンセンスの規制こそが、国家権力による過度な表現規制、および、情報統制への地獄の一丁目であると警鐘を鳴らしている。
〈戦前もまず、「エロ・グロ・ナンセンス」がやり玉にあがりました。エロ小説とかエロ写真とか…。「日本がこんな大変な時に、こんなものが出回っている」「こんな下品なものはこの世から消してしまえ」という雰囲気があった。そういうものは取り締まりやすいし、そのための法律も作りやすかったんですね。
表現の自由には責任が伴うことを、日本は少し勘違いしている。アメリカでは、家の外観を変える時、(たとえ、窓を大きくするだけでも)役所に申請し、近所の同意も取り付ける。公に影響を及ぼす場合、そうして責任が生じる。
ちばてつや氏の言う「エロ・グロ・ナンセンス」が槍玉に上がったのは、このエログロナンセンスが、”「日本がこんな大変な時に、こんなものが出回っている」「こんな下品なものはこの世から消してしまえ」という雰囲気”への抵抗と批評の意味を持っていたからで、有名なサド侯爵や、バタイユなども、彼らの激しい背徳の追求は、対岸にキリスト教を睨んでの抵抗であった。 エロ本には詳しくはないが、胸を張って、ちばてつや氏たちの時代の性的開放、常識の破壊を目指したエログロナンセンスや、サドの背徳小説と並ぶものだという、覚悟と怒りがあるものなら、どれだけ迫害を受けても、堂々と表現の自由の侵害だ!!と抵抗をすればいい。そうでなく欲望の単なる追求なら、場所を限定して商売すればいい。


そのうち、同じ法律で新聞記事や本、放送の規制にまで広げていきました。国民の目をふさぎ、耳をふさぎ、口をふさぐというように、国民の考えそのものを取り締まっていくことになっていった。権力を持つ人たちは自分たちが持って行きたい方向へ、国民ごと国を持って行く。反対する人、自分たちにとって都合の悪い余計なことを言う人はどんどん牢屋に入れられた。それが戦前の日本だったんです。
 ぼくも5人の子どもがいました。世間には子どもに見せたくないものはたくさんあります。でも、たとえば何が「児童ポルノ」かは、権力を握った人たちが判断して取り締まることになる。しかも、ただ持っているだけでも処罰される。処罰の対象が漫画やアニメ表現にまで広げられると、さらに拡大解釈されかねない。どういう表現をするのか、報道をするのか、どういう集会が許されるのかということに発展しかねません〉(14年9月7日付しんぶん赤旗日曜版)


表現することを取り締まられることには危惧を感じなくてはならない。権力者側に価値観や、倫理観の判断を委ねることは、法で裁く前に何が犯罪なのかを取り締まる側に委ねる共謀罪同様危険なことだ。均一な嗜好性、道徳観、倫理観、こうしたことを押し付けられては、芸術はもとより、人間社会全体の(特に日本のように全体主義社会になりやすい国は)多様性が押しつぶされてしまう。


しかし、大人として、適切な対応をすることまで、思想統制と騒ぐのは、石玉混同。浅薄な日本指導者は、外国人に眉をひそめられたくないから臭いものに蓋とばかりに取り締まるのだが、それは、やはり他の先進国から見て、あるいは先進国でない国々から見ても、日本の野放図な性情報の公共への氾濫は、問題があると言える。


問題は、”公共への氾濫”なのだ。エロスも人間の楽しみの一つなのだ。アダルト・ポルノはそれにふさわしい場所を設定し販売すればいい。生活用品と並んでおいてもいい性用品は避妊具くらいまでにしてほしい。しかし男性の性欲処理を過剰に優先させてきた日本(戦中もまずその心配で慰安所を手配した)国際社会に照らしても、あまりに大人として、また男女が共生する社会としても、無責任だったと思う。


単なるエロ本の規制と軽く扱わずに、我々はこの施策がどう発展していくのか、注意深く観察しておく必要がある。
(編集部)


単なるエロ本の規制と軽く扱わずに、これを機に反対者も表現者も享受者も”表現の自由”の本当の意味を考え、問題をまぜこぜにさず、表現の自由とその責任を明確に自覚するときだろう。これはヘイトスピーチが表現の自由だ、と反発する人々がいる問題にも、答えを見出せる。 




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