密接な関係にある他国から

アメリカと日本の社会、文化、日常感覚など、下から目線でつなげてみる。

NHK全訳トランプ就任演説の詭弁

NHKがトランプ就任演説をそれなりに立派な日本語に訳している。
これだけ読むと、融和も強調、国民の手に政治を、などと感じのいいように捉えられるかもしれないが、それは日本語訳。日本の常識、日本の現状を当てはめて読めば、である。
全文は、こちらのサイトで読んでほしいが、幾つか例を引いて、いかに浅薄な詭弁を弄しているか指摘してみたい。

最初の来賓へのお礼は当然として(いくらトランプでもここで無礼なことは言えない)


きょうの就任式はとても特別な意味を持ちます。なぜなら、きょう、私たちは単に、1つの政権から次の政権に、あるいは、1つの政党から別の政党に移行するだけでなく、権限を首都ワシントンの政治からアメリカ国民に返すからです。


ワシントンの小さなグループが政府の恩恵にあずかる一方で、アメリカ国民が代償を払ってきました。


まずこれが詭弁。政治家と一般化しているが、あきらかに上下院議員たちへの否定を述べている。まるで彼らが自分たちだけで議員になっているかのように言っているが、すべての議員は選挙で選ばれている。日本のように世襲議員たちが地盤引き継ぎで当選し、勝手に政府を動かしているわけではない。アメリカの議員たちは自分たちに投票する人たちを蔑ろにはできない。


もちろん大口献金をする企業や富豪の影響力はあるけれど、それも日本ほどあからさまでもない。だから、貧しい白人層を煽ったトランプが大統領候補になれたのだ。


あまりにも長い間、ワシントンの小さなグループが政府の恩恵にあずかる一方で、アメリカ国民が代償を払ってきました。ワシントンは栄えてきましたが、人々はその富を共有していません。政治家は繁栄してきましたが、仕事はなくなり、工場は閉鎖されてきました。既存の勢力は自分たちを守ってきましたが、国民のことは守ってきませんでした。


”政治家は繁栄してきました”のではなく、一握りの資産家、大企業が反映してきたわけで、トランプもトランプが選んだ閣僚たちがその一握り。 共和党は大企業資産家優先の政策を行い社会保障、福祉を削る、小さな政府=いわゆる自己責任、貧乏人の面倒はごめんだ、を標榜してきた。だから彼らは、国民皆保険制度などもってのほかで、オバマケアを忌み嫌っている(単にオバマ憎しもあるが)


政治家、議員だけが反映などまさに幼稚な言説。ちょっと考えれば矛盾点に気づくはずだが、トランプな人たちは気がつかない。
政治家が工場閉鎖を決めたのではなく、企業が利益追求で閉鎖し、海外に移転させた、それをオバマ政権の環境問題やクリーンエネルギー開発のせいで、閉鎖になったと吹聴し、
自分の票を集めるのに利用した。 海外の工場をアメリカに戻し、雇用を創出という詭弁も古き良き時代の3交代制の人的作業は、今や海外の工場はオートメーション化システム化され、国内に工場が戻ってきても、昔のような雇用は戻らない。石炭採掘のような危険の多い重労働も企業サイドではリスクマネージメント、補償等で逆にコスト高。人件費諸経費の高い国内で生産された製品は値段が上がり、一般消費者の家計を圧迫する。


彼らが首都で祝っている一方で、闘っている国中の家族たちを祝うことはほとんどありませんでした。
政治経験なしの自分のひがみ。


このアメリカ合衆国は、皆さんの国なのです。本当に大切なことは、どちらの政党が政権を握るかではなく、私たちの政府が国民によって統治されているかどうかということなのです。2017年1月20日は、国民が再び国の統治者になった日として記憶されるでしょう。忘れられていた国民は、もう忘れられることはありません。
原文では統治者=Rulerという語を当てている。国民が政府をControl=コントロールするとも言っている。原文自体がイメージだけの意味をなさない言葉、本を読まない人特有の
不正確、不適切な言葉の選択が随所に見られる。
多民族、多宗教、思想、価値観の違う3億1千7百万人がどうやって統治するというのか。一部の人間による専制君主制、独裁政治に対し、選挙で選ばれた代表による、話し合いによる決定で、みんなで納めた税の再配分で国を動かし、社会保障を行う、これが議会制民主主義だし、その上に3権分立という一握りの権力で暴走できない仕組みを作っている。トランプの主張は、先祖返りどころか、イメージだけで現実的に不可能な国民による統治を標榜する愚か、結局議会制民主主義、三権分立に帰結する。要はトランプのいう”国民”とは、まさに”忘れられていた国民”彼に投票し賞賛し熱狂する騙されやすい人たちで、自分の頭でものを考える女性、ゲイ、有色人種、イスラム教徒、大卒者 彼より頭が良く、真剣に国民のことを考えている政治家、誇りのあるメディア人は含まれない。


私たちはこの新世紀のはじめに、宇宙の謎を解き明かし、地球を病から解放し、明日のエネルギーや産業、そして技術を、利用しようとしています。新しい国の誇りは私たちの魂を呼び覚まし、新しい視野を与え、分断を癒やすことになるでしょう。私たちの兵士が決して忘れなかった、古くからの知恵を思い起こすときです。それは私たちが黒い肌であろうと、褐色の肌であろうと、白い肌であろうと、私たちは同じ愛国者の赤い血を流し、偉大な自由を享受し、そして、偉大なアメリカ国旗をたたえるということです。


これ、なんか、前半、どこかで聞いたことあるなぁ、と思ったら、TVシリーズのWest Wing:邦題ザ・ホワイトハウスの中の、何回目かのバートレット大統領の一般教書演説のパクリじゃん!!!TVの演説の方がもっともっと洗練されて感動的だったけど。
そして後半はオバマ氏を一躍有名にした「リベラルのアメリカも保守のアメリカもなく、ただ『アメリカ合衆国』があるだけだ。ブラックのアメリカもホワイトのアメリカもラティーノのアメリカもエイジアンのアメリカもなく、ただ『アメリカ合衆国』があるだけだ」「イラク戦争に反対した愛国者も、支持した愛国者も、みな同じアメリカに忠誠を誓う『アメリカ人』なのだ」の焼き直しの劣化版。こんなのを読んでトランプが融和を訴えたなんて思うのは、ナイーフすぎる。


文全体も作文の域を出ない幼稚な感動させよう盛りあげばかり。自分の心底のポリシーがないから表現も薄い。だったら、自分で書かないで、スピーチライターに任せればよかったのに。いやそれじゃ、意味のわからない単語があってつっかえるからダメか?不幸なことに英語は振り仮名をふれないものね。


どうぞ全文お読みください。よく読むと本当にひどい。アメリカファーストならそれでもいいけれど、どうしたら意見の違う多くの人たちにできるだけ公平で満足のいく政治ができるのかという試行錯誤のアメリカ建国の歴史を、原始人がいきなり否定。
結局自分は国民に選ばれたのだから自分が”統治”するとか単純に思っている。
政治家連中が邪魔だから、追い出して自分のお友達のお金持ちで”統治”する。
統治という表現を用いること自体彼の、無意識の人に対する一方的支配が当然というセンスが見えてくる。
統治とは、特定の少数者が権力を背景として集団に一定の秩序を付与しようとすること。 政治とほぼ同義に用いられることが多いが,厳密に解すれば,統治は少数の治者と多数の被治者との分化を前提とし,治者が被治者を秩序づけることを意味するのに対して,政治は,少なくとも,対等者間の相互行為によって秩序が形成されることを理想としている。(by wiki)



つまり、政治とは何か、いうことさへもわかっていない御仁であるということだ。
トランプ大統領に対する対策は、彼の言葉を間に受けないこと、分析して深読みしないことである。

PVアクセスランキング にほんブログ村
ランキングに参加しています。宜しかったら、両方を
クリックしていただけると嬉しいです。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

にほんブログ村


人気ブログランキングへ