密接な関係にある他国から

アメリカと日本の社会、文化、日常感覚など、下から目線でつなげてみる。

自衛隊員そして,彼らを送り出す日本の国民も必読、PKO舞台司令官の手記


なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか―PKO司令官の手記
なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか―PKO司令官の手記
著者:ロメオ ダレール
出版社:風行社
カテゴリー:本


私の住んでいる町は、NY郊外の小さな町が、ミニマルアートの巨大美術館ができたので、アートイベントも盛んで、現代美術の画廊も幾つかある。その中に,非営利のジャーナリズム写真の画廊があり、よく展示を見に行く。そこで、ルワンダの10年と云う展覧会で、ルワンダジェネサイドの時、レイプされ、妊娠した女性たちと,その時の子供たちの肖像写真と証言を展示していた。普段長い英語のキャプションは目が泳いでパスしがちなのだが、これは全てを読み通した。そして,ルワンダに興味を持ち,幾つかの証言を集めた本を読んだ。この写真展とルワンダの本についてはまた別に書いてみたいのだが、今日は、その中でも,ルワンダにPKOで派遣された司令官の手記邦題『なぜ,世界はルワンダを救えなかったのか』風行社 著者ロメオ.ダレールについて書きたい。



この人は、カナダの人で、お父さんが軍人(下級士官)であり、子供の頃から軍人に憧れ、軍に入りエリートコースを歩んで、停戦下のルワンダに、PKO部隊の司令官として1993年10月に派遣された。そして,不幸な事に、大虐殺の勃発を目の当たりにし、そのただ中をルワンダで苦闘したその経験がつづられている。単に惨劇の目撃者としてではなく、その間の、国連とのやり取り、政府軍革命軍との調停、市民の救助、他国からの参加のPKO軍のとりまとめ(各国の思惑、認識の差に依る非統率)帰国後PTSDに苛まれ、軍を引退、酒に溺れ、2000年に自殺未遂をするにいたって、自らの体験のすべてを書く事で、辛くも立ち直り、2005年カナダの上院議員となっている。
彼のように,軍人を転職と思い、軍を愛する経験も豊かな人物でさえ、しかも国連主導の停戦調停を役目としておもむいたにもかかわらず、全く予測不可能な状況のただ中でもがきつづけ、自分の精神を徹底的に破壊されてしまったのだ。安倍内閣の戦争法案の詭弁など、全く通用しない、このような状況に、送り込まれる可能性を自衛隊の人たちは知る必要があるー知る権利、考える権利、拒絶する権利がある。


アメリカでは、TVコマーシャルで、最新式の義足、義手をつけて、スポーツをしたり,退役後の新しい職場で,生き生きと働く元兵士を映している。これは、退役軍人支援ーリハビリや再就職斡旋などを支援する団体のコマーシャルなのだが、しかし,精神的破壊を免れて無くした手足を克服してゆける人はどのくらいの割合でいるのだろうか? 帰還後の自殺、不眠ストレスや恐慌発作ーこれによって、家族や周囲の人を殺害してしまうケースも多々あるのだ。
アメリカ人は普通は自殺は考えない、希望を捨てないことを旨としていて、前向きである。その彼らでさえ、克服できない消えない傷をもてあまし多くの自殺者をだしている。時として責任感や孤独から自殺する人の多い日本。身体的な障害、あるいは心の問題の持つ人たちに対する、社会の受け入れ態勢も整っていない日本の社会では、アメリカ以上に深刻な問題を生み出すだろう。


ダレール氏の手記は、PKOだから,戦闘の行われていない場所だから、治安維持の警護だから、後方支援だから、リスクは上がらないなどということが、どれだけ馬鹿げた詭弁であるか、生き残っても,以前の自分は決して帰ってこない、それは、家族や周囲の人にとっても人生の破壊になるのだ、ということを、痛切に語っている。



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