密接な関係にある他国から

アメリカと日本の社会、文化、日常感覚など、下から目線でつなげてみる。

問題も多いけど、人の温かさ、陽気さ、生きることへ情熱が現れるリオ・オリンピック

朝日がリオ・オリンピックにとてもいい記事を書いている。入場式を見ていて、選手一人一人の顔の輝きと、その背景の様々な問題、彼らの置かれた環境を思って、胸が熱くなった。シリア選手団はアサド大統領が送り出した、難民チームにはシリアを追われた選手がいる。それでも、全ての選手が幸せな興奮と緊張に包まれたいて。
カジュアルで、雑多で、温かく、情熱的なブラジルらしい、悲しみも憎しみもひっくるめダンスに昇華させるカーニバルを持つリオらしい、オリンピックになるだろうという予感がする。



相次ぐテロ、漂う難民、分断される社会。世界がきしむなか、リオデジャネイロ五輪が幕を開けた。競技場のすぐ外にも貧富の差が横たわる。国籍とは、祖国とは、五輪の力とは。国の垣根を越えて集った選手たちが問いかける。



 サンバの熱狂に包まれたマラカナン競技場での開会式。競泳女子200メートル自由形に出場するシリア出身のユスラ・マルディニ(18)は入場行進でひときわ大きな喝采を浴びた。



 ログイン前の続き今回の五輪で初めて結成された難民選手団の一人だ。シリアやコンゴ民主共和国、エチオピア――。紛争で祖国を離れた選手ら9人と一緒に五輪旗を掲げて行進した。「どこの国の出身かは問題じゃない。私たちはすべての難民を代表し、ここにいる」



 内戦が続くシリアから逃れる決意をして、ボートでギリシャに渡ろうとしたのは1年前。定員を大きく上まわる20人を乗せたボートは洋上でエンジンが故障。海に飛び込み、3時間半、ボートを押しながら泳いで岸にたどり着いた。



 いまドイツで避難生活を続ける。「嵐のようなつらい日々も、いつか落ち着く日が来る。あきらめなければ夢はかなう」。緊張気味だったマルディニは右手をあげ、笑顔になった。



 ■戦火の中、練習



 選手団の陸上女子1500メートル、アンジェリーナ・ナダイ・ロハリス(23)は、民族対立が続く南スーダンの出身だ。6歳のとき、自宅が襲撃され、両親とはぐれた。祖国は2011年にスーダンから独立したものの、いまも内戦状態が続く。「私たちすべての難民の状況が、良い方向に向かう大きなチャンスにしたい。祖国と両親を思って走る」と言う。



 南スーダンは今回初めて、五輪に選手3人を派遣した。「戦火の中でも練習を続けてきた。誇らしい」。陸上男子1500メートルに出場するケンイ・サンティノ(22)は行進中に何度も拳を振り上げ、喜びを爆発させた。そして、母国から参加できなかったロハリスたちに思いを寄せた。「旗が違っても仲間に違いない。いつかきっと、一緒に出られる」



 ■国籍変更、批判を越えて



 身長147センチ。選手団の中でもひときわ小さいお笑い芸人の猫ひろし(38)=本名・滝崎邦明=はカンボジア国旗を両手に持ち、満面の笑みで入場した。



 5年前、マラソンで五輪に出るため、選手層の薄いカンボジアの国籍を取得した。「安易な国籍変更」と批判された。そのうえ、国籍取得から1年たっていないとの理由でロンドン五輪には出られなかった。



 「悔しかった」。出場できないと決まった日、40キロ走った。芸人の仕事を終えた深夜や早朝を使い、毎日平均30キロ走り続けた。1年の3分の1をカンボジアで過ごし、クメール語も覚えた。4年間、カンボジアでトップの成績を維持し、リオへの切符をつかんだ。



 今回は批判より、「よく頑張った」との声が多かった。カンボジアのライバルも「我々の誇り」と喜んでくれた。「五輪は国の枠を超えた夢の舞台。一生懸命走りたい」



 ■祖国から出場



 国の垣根を越え、五輪を目指す選手は少なくない。



 7大会連続の出場となる女子体操のウズベキスタン代表オクサナ・チュソビチナ(41)は、過去2回はドイツ代表として出場した。02年に息子が白血病になり、最先端の治療を受けさせるためにドイツに渡り、国籍を変えた。



 祖国の人たちから「非国民」「裏切り者」と非難されることもあった。だが、「選手人生の締めくくり」として国籍を生まれ育ったウズベキスタンに戻した。



 祖国に隣接するアフガニスタンでは、テロが絶えない。「五輪にかかわる人々は国籍に関係なく友好的。平和と平穏の場があることを、とてもうれしく思う」



 ■ブラジル、彩る多様性



 開会式でもっとも大きな歓声を集めたのは、地元ブラジルの選手団だった。選手たちのルーツは実に多様で、計14カ国の出身者で構成される。水球のイービス・アロンソ(35)はキューバ生まれ。チームにはセルビアやイタリア、スペイン生まれの選手もいる。



 陸上男子400メートル障害の杉町マハウ(31)はブラジル生まれの日系4世。8歳の時から日本で暮らす。5年前に日本人の妻(29)と結婚し、いまは埼玉県越谷市で暮らす。国籍を変えることも考えた。でも、「国籍がどちらでも、僕はマハウで何も変わらない」と思い直した。母国での五輪。レースには長男世成(せな)くん(2)、次男俐生(りお)くん(5カ月)ら家族が日本から応援に来る。「ブラジルは世界中にルーツを持つ人たちが一緒に社会をつくっている。そんな空気を感じてほしい」



 日本選手団のルーツも多様だ。競泳女子の今井月(るな)(15)の亡くなった母と、卓球の吉村真晴(まはる)(23)の母はそれぞれフィリピン国籍だ。


 「多様性」を掲げるリオ五輪。父がジャマイカ国籍の陸上男子100メートルのケンブリッジ飛鳥(23)は「世界でどこまで通用するか見ていただきたい」。(牛尾梓、宮嶋加菜子、佐々木学)


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