密接な関係にある他国から

アメリカと日本の社会、文化、日常感覚など、下から目線でつなげてみる。

中国・フィリピン 南シナ海領海問題仲裁法廷について

愛国右翼の方々の共通の敵、中国・韓国。トンデモ石原元都知事が火を着けた尖閣諸島問題から、竹島問題もヒートアップ。 それ故、南シナ海のフィリピンと中国との仲裁裁判所「仲裁判断」に鬼の首を取ったように日本メディアは報じていた。


私は常に、日本メディアの海外のニュアンス無視、あるいは都合の良い偏向報道に、問題意識を持っている。アシア関係は疎いのだが、北京老学生ブログさんの記事を読んで、とても興味深く感じたので、紹介したい。

これは、今月12日に12日に南シナ海問題を巡る仲裁裁判所の判決がおりたものの、その内容に関する13日付の新聞各紙の報道に、『どうもよく分からない』『<中国の完敗>を新聞各紙が伝えているが、なぜ、こうなったのかが説明されていない』と感じたからだ。それで、自分で感じた『違和感』をそのまま記事の形にした。

前・中・後編で、この南シナ海仲裁法廷についてと、講演記事を書かれている。

『アジア記者クラブ』という団体の主催で、横浜市立大学名誉教授の矢吹晋氏による『南シナ海領土紛争と仲裁裁定』とい講演。


こちらは矢吹晋氏の”南シナ海におけるフィリピンと中国との仲裁裁判所「仲裁判断」の功罪――内閣機密費に酔い痴れる新聞記者たちの判決誤解――”の記事。


DIRECTOR'S WATCHING No.89:南シナ海におけるフィリピンと中国との仲裁裁判所「仲裁判断」の功罪―内閣機密費に酔い痴れる新聞記者たちの判決誤解


私が一番注目したのは、仲裁法廷の仲裁員の選定が、ガーナ・フランス・ポーランド・オランダ・ドイツから選出されたのだが、この中ドイツはフィリピン選出。残りは日本の柳井俊二氏が選出したこと。少なくとも、一名は中国により選出されるべきだし、日本の領海問題に中立ではないため、第三国の選出が望ましいこと。その上この柳井俊二氏は、安倍政権の安保法制懇の座長で会ったことを中立性に対する重大な疑惑が中国から提起されている事実。中国は法廷を欠席、文字どうり欠席裁判出会ったこと。


1980-90年代に成立した海洋法は新しい取り決めで、歴史的経過は、たとえば歴史的水域(historic waters, historic bays)のような例外を除き、基本的に無視するタテマエになっていること。旧日本帝国は1938~45年、スプラトリー諸島を新南群島 と名付けて領有し、サンフランシスコ条約および日華平和条約でこれを放棄。しかし「放棄した」だけで、「放棄後の帰属先」は折からの冷戦体制のもとで、「両陣営のゼロサム化」が進行しており、特定を避けることになった、という不確かな状況にあること。



判決そのものを受け入れないと主張している中国は、海洋法のいわば親機関に当たる国連において、中国は安全保障理事会の常任理事国の一員であり、拒否権をもつ。このような大国を「管轄権のない仲裁法廷」が裁くことにそもそもボタンの掛け違いであったこと(ちなみに超大国アメリカは未だに海洋法を批准していないそうだ。)



そして、仲裁に従わない中国を大声で糾弾する、日本にブーメランになるのが、この仲裁法廷での、島・岩の認識。この判定に従えば、日本最南端の島とされる沖ノ鳥島、紛争の種の尖閣諸島も岩と認定されるということ。


島であれば200海里、岩であれば’12海里の領海となる。


矢吹晋氏は、中国は、こうした諸々の理解の上、短期的には、硬軟両用さまざまの外交的駆け引きが予想されるが、中期的、長期的に見ると、結局は、判決を部分的に認めつつ、中国自らの、既存の実効支配を認めさせるための外交交渉に力を入れることになると思われる、と語られている。


最後に氏が、日本メディアの反中盛り上げの例として、今最も左派である東京新聞の論説副主幹氏のコラムを例に、日本メディアの偏りと煽りを指摘している。


附録:東京新聞論説副主幹長谷川 幸洋コラムからの抜き書き 
以下は、ついに中国は戦争への道を歩み始めたのではないか、という「強い懸念」 戦前日本を思い出す 『現代ビジネス』7月15日(金)7時1分配信からの抜粋である。
 
「判決は紙くず」と切り捨てる恐ろしさ
 ・中国の完全な敗北である。中国はこれから、どんな行動に出るのだろうか。中国は7月13日、判決について「無効で拘束力がない」とする白書を発表した。外務次官は「判決は紙くず」と酷評している。
 ・米国は軍が南シナ海を定期的にパトロールして、中国の主張を実態的に崩していく。これに日本など各国も海と空から支援していく。当面はこれ以外の方策はない。

(そんなに力まなくても中国も交渉の落とし所を考えているはず)
 ・欧州はこれまで距離を置いてきた感があったが、ここへきて南シナ海問題は他人事ではない、と懸念を強めているようだ。欧州勢の参加が実現すれば、日米欧豪が対中包囲網で協調する展開になる。(なぜそう中国の孤立化を望む?中国は欧州ともパイプを築いている)
 ・加えて直接の当事者であるフィリピンやベトナム、マレーシア、シンガポールなど中国に距離を置く東アジア各国も対中圧力を強めていくだろう。
ヤクザと同じ発想
 ・相手に隙あらば自分の縄張りを拡大したい。いま南シナ海で起きているのは、本質的にそういう事態である。米国が南シナ海で航行の自由を完全に維持しようと思えば常時、空母を2隻は現地に派遣しておかなければならない、と言われている。
だが米国にそんな余裕はないので、間隙を突いて中国はせっせと人工島に滑走路を建設してしまった。かつての日本がそうだった(いやもっと卑怯で犯罪的だったような。。)
 
・ヤクザに法の順守を説教しても始まらないのと同じように、中国に「法を守れ」と叫んでみても何も変わらない。(アメリカさまも守ってない)
 
思い起こせば、かつての日本もそうだった(日本と重ねすぎ)。満州事変の後、日本は国際連盟が派遣した現地調査委員会(リットン調査団)の報告に同意できず1933年9月、国際連盟を脱退した。(中国は常任理事国、脱退なんてしないね。国際社会の舞台で、交渉できる、交渉力、タフさ、経済力を持っている)
 ・そういう考え方が満州事変後の連盟脱退、2.26事件、さらに盧溝橋事件から日中の全面戦争へと発展していったのだ。これは、まさにいまの中国ではないか。(いや戦前回帰は日本の方だ。)
法の支配などといっても、中国を国際法に従わせる強制力や権威は仲裁裁にはもちろん、日米欧にもない。そうであれば、やはり力がモノをいう。(実際効力の弱い海洋法をまるで日米欧が従わせる力がないかのように語り、中国の武力行使を匂わせるのは、完全な危機感煽り、メディア人のやるべきことではない)
 ・私がこのコラムで言おう。いま中国は戦争への道を走り始めたのではないか。まさに「歴史は繰り返す」である。(そういうことは安倍政権にいうべきだ。歴史は繰り返す=世界から孤立、無謀な侵略戦争に突入は日本の歴史。)
東京新聞論説副主幹長谷川 幸洋記者


完全に冷静さを欠いた反中煽りコラムになってしまっている。日本の戦前回帰を非難できないストレスの反動か?各新聞もどう論調を展開していた模様。もう武力での囲い込みなど、無駄な死人を出すだけ。中国も納得する公平に算出された仲裁人の元、両国が話し合いこと。日本は横から、自分本位なバカな煽りをせず、冷静に見守ることが責務であると思う。


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