気候変動と絵画 無茶なスケープゴートは反発を生むだけ
気候変動問題、地球規模の環境汚染、動物愛護 など多くの人々がその必要性に目覚め、抗議活動や、訴えを行なっている。
日常的に無関心である人々にも、関心を提起し目を向け、すべての生命が生きてゆくこの地球を健全化し大切にする努力をする、それは急務と言っていい。しかし、自分が正しいことをしているという使命感と思いだけで、行動すれば、共感を得るどころか、ただの醜い自己主張に過ぎないとみなされてしまう。
最近、オイルによる環境破壊の象徴の標的として、美術館展示の絵画(油絵)が標的にされるケースが後をたたない。実質ガラスやケースに守られ、破損は免れるが、インパクトは大きいし、彼らにとっては宣伝効果抜群なのかもしれない。
多分日本でも最も人気の高いフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が標的にされた。
オランダの裁判所は4日までに、ベルギーの気候変動問題の活動家2人に対し禁錮刑を言い渡した。フェルメールの名画「真珠の耳飾りの少女」を標的に抗議を行ったことが罪に問われた。
2人は環境活動団体「ジャスト・ストップ・オイル・ベルジアム」のメンバーで、それぞれ禁錮2カ月の刑を言い渡された。このうち1カ月には執行猶予が付いた。
オランダのハーグにあるマウリッツハイス美術館で先週起きた出来事は動画で広範に拡散。そこには男性1人が当該の名画に自分の頭部を接着する様子が映っている。抗議に参加したもう1人は、トマトスープの缶の中身を前出の男性のシャツに浴びせた後、壁に据え付けられた台に自らの手を接着した。この人物には現時点で判決は下っていない。3人目の人物が、これらの行動を撮影した。
彼らの1人は来館者に向かって、「美しく、金に換えられない価値のあるものを突然目の前で破壊されたらどう思う?」と、英語で問いかけた。その上で「怒りを覚えるか? なるほど。ではそうした感情は今どこにある? この地球が我々のまさに目の前で破壊されているときに」と続けた。
動画では来館者らが異議を込めて「不快だ」、「恥を知れ」などと叫んでいるのが聞こえる。
抗議行動のメンバーはさらに「この絵はガラスで守られている。全く問題ない」と発言。「弱い立場にあるグローバルサウス(訳注:主に南半球に偏在している開発途上国)の人々は守られていない。我々の子どもの未来は守られていない」
美術館側は17世紀に描かれた当該の名画について、「損傷はない」と説明。翌日には一般展示に戻した。ただオランダ検察によると、19世紀に作られた額は、抗議行動の中で損傷したという。
検察は判決を伝える報道向け発表の中で、メンバーが活動家に向けて「メッセージを発したかった」と説明。「展示されている美術作品は皆のものであり、我々全員が鑑賞するためにそこにある。それを汚した被告らは、自分たちのメッセージがそれ以外の全てに優先する気分でいる」
検察の当初の求刑は、禁錮4カ月でうち2カ月を執行猶予とするものだった。しかし裁判官は、自らの判決によって他の人々が意思表示のための行動を思いとどまるようになるのは望まないと述べた。ロイター通信が伝えた。
当該の2人の裁判は、迅速に審理する形で行われた。罪状は当該の絵画に対する破壊と公然たる暴力。裁判の迅速化に同意しなかった3人目の活動家は、4日に出廷する予定。検察は3人全員が今回の行動について「連帯責任を負う」と述べた。ロイター通信が報じた。
判決に先駆け、美術館や自動車のショールーム、企業本社などを標的にした反化石燃料の抗議行動がここ数週間相次いでいた。先月には2人組の活動家が、独ポツダムのバルベリーニ美術館に展示されているモネの「積みわら」にマッシュポテトを投げつけた。一方英国では、ジャスト・ストップ・オイルのメンバー2人が、ゴッホの「ひまわり」にトマトスープをぶちまけ、器物損壊罪で訴追されている。
2日の判決を受けてジャスト・ストップ・オイル・ベルジアムは、ロイター通信の取材に電子メールで答え、「気候問題の活動家が非暴力的な方法で地球上の生命の大量虐殺に異を唱えた。それで非難されるというのは何とも皮肉ではないか?」と述べた。同団体と英国のジャスト・ストップ・オイルとの間に提携関係はない。
モネの「積みわら」にマッシュポテト。ゴッホの『ひまわり」にトマト缶および「花咲く桃の木」ガラスケースに手を接着。ピカソの絵画「朝鮮の虐殺」にもガラスケースに手を接着。この接着はこれは何のための抗議?か良く分からない。
反化石燃料の抗議なら、お門違いだ。特に印象派の画家たち、モネなどテレピン(松脂の水蒸気蒸留によって得られた油。サラサラでジンと同じ匂いがする)を多用していたため、もろくなりひび割れや剥落の心配など、保存がとても大変だという。しかし、敗戦間際の日本はこれで戦闘機を飛ばそうとしていた、というのだから燃料使用もできるのだろう。ただし銃後の人々が松林に行き、木に傷をつけて樹液を集めるなんて相当大変、労多くして益少なしだ、メープルシロップじゃないんだから。。
どのみち絵画に使用する量などたかが知れている。過去の名画でも、使用オイルは、ポピーオイル(芥子の実)・リンシードオイル(亜麻の種子)・ラベンダーオイルなどが一般的で、植物やその種子・樹脂から生成されたものだ。化石燃料とは何の関係もない。
今は油絵をターゲットだが、マイクロプラスティックの汚染を心配するなら、アクリル画もターゲットだし、樹脂3Dだってそうだ。森林破壊なら、板画や木彫、木版画だって、いや紙媒体全体が、攻撃対象だ。
ああ、筆洗油はペテロール(石油から 抽出)だった。ただ今の筆洗油は油水複合?ジェル状になって体に害が少ないものが出ている。こうした洗浄液は、アートなんて小さい規模のものより、機械や船舶の洗浄のために開発されていいものが出てきている。
昔のアーチストたちはよく体を壊して亡くなった。今は、換気や薬品・溶液の使い方、新しい薬剤などで自身の健康や周囲の環境への気遣いも教えられている。
芸術作品はみんなの物? 後で高い値段がついたりしてマネーロンダリングに使われたり、果ては、プロパガンダで攻撃対象にされたり、ほんとアーチスト以外の誰かの物だ。
名画の作者たちの多くは、生前その恩恵を受けられてはいない。裕福に優遇され生活できたものは、やはり少数派だ。
この正義を振りかざす人たちにも、自分たちが見せしめに使っている目の前の作品を作った、一人の孤独な制作者のことを少しは想像してみてほしい。アーチストらに何の罪がある? こういうことが流行るのが、腹立たしい。
”正義”の前には、犠牲はつきものという考えが、常に人類の悲劇を生むスタートラインだ。
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