密接な関係にある他国から

アメリカと日本の社会、文化、日常感覚など、下から目線でつなげてみる。

ありえない、ここは中世か!?最高裁、中絶合憲覆す。

アメリカに来たばかりの頃、この国に、女性の中絶を法の力で阻止すると言う試みがある、と聞いたとき、実際からかわれているのかと思った。


ミソジニー大国日本でさえ、中絶を法で禁じたい、などという論争はありえないだろう。
女性の身体と人生を左右する決断を、自身ではなく社会で決定するなどと言うことは、自由と民主主義を標榜する現代アメリカで、議論があること自体信じられない思った。


アメリカという国は、アンバランスな国だ。合理性の国であり、不条理の国だ。
銃規制を一切させない力、妊娠中絶を禁止する力、警察による有色人種に対する過剰な暴力と軽い罰則。キリスト教原理主義と、ライフル協会が強大な力を持ち、共和党議員に圧力をかけ、反知性主義のマッチョな男たちと、開拓時代の倫理観で女性を支配したい敬虔な人々がその土台を支えている。


それでも辛うじて、 1973年最高裁の「ロー対ウェイド判決〜アメリカ合衆国憲法修正第14条が女性の堕胎の権利を保障していると初めて判示し、人工妊娠中絶を規制するアメリカ国内法を違憲無効とした判決」によって、「妊娠を継続するか否かに関する女性の決定は、プライバシー権に含まれる」という認識が示されてきた。


それが、米最高裁は24日「ロー対ウェイド判決」の判例を覆し、中絶を連邦憲法上の権利としては認めない立場を示した。現在9人の最高裁判事のうち6人が保守派が占めている。
そのうち3名が、たった一期のトランプ大統領による任命で、かつトランプ共和党は、オバマ大統領の任命権を屁理屈で”盗んだ”  保守派のトランプ擁立はこのためだと言っても過言ではない。トランプ自身は中絶問題などどうでもいいのだろうが、人気を維持するために中絶禁止派と手を携えて、最高裁判事人事に筋の通らない介入を成功させた。


民主党は常にジェントルマンで、オバマ氏も、共和党の判事指名妨害には、何が何でも抵抗すべきだった、と思う。ただ当時は、ねじれ国会で、共和党は何が何でもオバマ大統領の政策はすべて潰すという目的で、何もかも反対していた。


後悔先に立たず。銃規制が小さな一歩を踏み出したが、NYでの武器携帯規制を最高裁が違憲とし、そして、中絶を連邦憲法上の権利としては認めない立場を示してしまった。


もちろん、大きな怒りと抗議のデモが巻き起こっている。



米連邦最高裁は24日、アメリカで長年、女性の人工妊娠中絶権は合憲だとしてきた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆す判断を示した。この判決を受けて、アメリカでは女性の中絶権が合衆国憲法で保障されなくなる。


最高裁(判事9人)は、妊娠15週以降の中絶を禁止するミシシッピー州法は、「ロー対ウェイド」判決などに照らして違憲だとする同州のクリニックの訴えについて、6対3で違憲ではないと判断した。下級審では、違憲との判決が出ていた。


「我々は、憲法が中絶する権利を付与しないと考える(中略)そして、中絶規制する権限は国民と、国民が選んだ代表に戻さなくてはならない」と、判決文には書かれている。


今回の判決は、約半世紀前に連邦最高裁が定めた判例を、同じ最高裁が自ら覆したことになり、きわめて異例。今後、アメリカ国内で激しい論争と政治対立を引き起こすとみられている。


今回の判決は、保守派判事6人とリベラル派判事3人の思想的な違いがそのまま反映されたものとなった。判事9人のうち、保守派のサミュエル・アリート、クラレンス・トーマス、ニース・ゴーサッチ、ブレット・キャヴァノー、エイミー・コーニー・バレット各判事は、明確に「ロー対ウェイド」判決を覆す判断に賛成した。このうち、ゴーサッチ、キャヴァノー、コーニー・バレット各氏は、ドナルド・トランプ前大統領に指名され就任した保守派。


穏健派とされるジョン・ロバーツ最高裁長官は、別の意見を書き、ミシシッピー州の中絶禁止は支持するものの、それよりさらに踏み込んだ判断には反対したと述べた。


対して、反対意見を書いたリベラル派は、スティーヴン・ブライヤー、ソニア・ソトマヨール、エレーナ・ケイガン各判事。3人は、「この法廷のために悲しみ、さらにそれ以上に、憲法による基本的な保護を本日失った何百万人ものアメリカの女性のために悲しむ」と書いた。


他方、賛成意見を書いたトーマス判事は、中絶権の見直しに加えて今後は、避妊や同性愛行為の自由、同性婚などの合法性を認めた過去の判例を見直すべきだと書き添えた。


今回の判決をめぐっては、米政治ニュースサイト「ポリティコが今年5月に保守派判事の意見書草稿を入手して報じていた。その中で、筆者のアリート判事は「ロー対ウェイド」判決について、「はなはだしく間違っている」と書いていた。報道を受けて、ジョン・ロバーツ最高裁長官は文書が本物だと認めていた。


米最高裁が人工中絶の合憲性を否定、人々の反応は?
アメリカでは、1973年の「ロー対ウェイド」事件に対する最高裁判決が、女性の人工中絶権を認める歴史的な判例として約半世紀にわたり維持されてきた。そのため、中絶に反対する勢力と、女性の選択権を堅持しようとする勢力が長年、この判決をめぐり争ってきた。


「ロー対ウェイド」事件について当時の最高裁は、賛成7、反対2で、胎児が子宮外でも生きられるようになるまでは女性に中絶の権利があると認めた。これは通常、妊娠22~24週目に相当する。これを受けてアメリカでは約半世紀にわたり、妊娠初期の3カ月間は中絶の権利が全面的に認められてきた。妊娠中期の中絶には一定の制限がかけられ、妊娠後期の中絶は禁止されてきた。


しかし、最近では一部の州が独自に、中絶を制限もしくは禁止する州法を成立させていた。


基本的権利を最高裁が=大統領



ジョー・バイデン米大統領はこの日の最高裁判決を受けて、「最高裁にとって、そしてこの国にとって悲しい日だ」と述べ、最高裁は「多くの国民にとってあまりに基本的な憲法上の権利」を「制限するのではなく、あっさり奪い取った」と批判した。また、判決は「極端な思想」が具体化したものだとも述べた。


「呆然としてしまう」とバイデン氏はホワイトハウスで報道陣に述べ、「近親相姦によってできた子供を、女性がずっとおなかで育てなくてはならないと想像してみるといい。これは残酷なことだ」と批判した。


バイデン大統領は報道陣を前に、中絶が制限されている州の女性が、中絶を認める他の州へ移動する「その基本的な権利を、私の政権は守る」と述べ、女性が移動する権利に州政府が介入することは認めないと話した。


大統領はさらに、中絶権をめぐる闘いは「終わっていない」として、「有権者は意見を表明する必要がある」と述べた。今年11月には議会中間選挙や各州政府の選挙があるのを念頭に、「今年の秋、ローが投票の対象になる。個人の自由が投票の対象になる。プライバシーの権利、自由と平等の権利、これがどれも、投票の対象になる」と、大統領は強調した。


判決の影響は



「ロー対ウェイド」判例が認めた憲法上の保障を最高裁自らが否定したことで、アメリカの各州はそれぞれ独自の州法で中絶を禁止できるようになる。半数以上の州が新しく、規制を強化したり、禁止することになるとみられている。


13の州ではすでに、連邦最高裁が「ロー対ウェイド」判決を覆せば自動的に中絶を禁止する、いわゆるトリガー法が成立していた。このうち、ケンタッキー、ルイジアナ、アーカンソー、サウスダコタ、ミズーリ、オクラホマ、アラバマの各州では、最高裁判決を受けて中絶禁止法が施行された。ほかの多くの州でもこうした法律が成立するとみられる。


これを受けて、アーカンソー州やルイジアナ州などで中絶手術を提供していた、いわゆる「中絶クリニック」が診療を中止し始めた。


アメリカで女性に中絶手術を提供してきた医療団体「プランド・ペアレントフッド」の調査によると、妊娠可能年齢の女性約3600万人が、今回の最高裁判決によって、中絶手術を受けられなくなるという。


中絶に関する世論が割れている、ペンシルヴェニア、ミシガン、ウィスコンシンなどの州では、中絶の合法性が選挙ごとに争われる可能性が出ている。他の州では、中絶を認める州に個人が移動して中絶手術を受けたり、郵便で中絶薬を取り寄せたりすることの合法性などが、個別に争われる可能性がある。


民主党知事は中絶権を州法に



中絶をただちに禁止しようとする各州とは逆に、カリフォルニア、ニューメキシコ、ミシガン各州などでは与党・民主党所属の州知事が、「ロー対ウェイド」判決が覆された場合に備えて、人工中絶権を州の憲法で保障する方針を発表している。


ロイター通信によると、バイデン政権(民主党)のカマラ・ハリス副大統領は23日、民主党が州政府を握る7つの州の州司法長官と協議し、中絶権を守る方法について話し合っている。


歓迎と悲嘆と


主張が最高裁に認められた形になったミシシッピー州のテイト・リーヴス知事は、判決をただちに歓迎し、同州が「この国の歴史における最大の不正義のひとつを克服するため、国の先頭に立った」と声明を発表した。


「この決定は直接、より多くの心臓が脈を打ち、より多くのベビーカーが押され、より多くの成績表が手渡され、より多くのリトルリーグの試合が開かれ、より多くの良い人生が送られることになる。喜ばしい日だ!」と知事は書いた。(お花畑か!!どれだけの子供たちが、育成環境の整わない妊娠で、暴力や貧困にさらされているか。)
長年にわたり「ロー対ウェイド」判決を批判してきた保守派のマイク・ペンス前副大統領は、判決が「アメリカの人たちに新しい始まりを与えた」と歓迎した。


「生きるための2度目のチャンスを与えられた今、生命の神聖性がアメリカの全ての州の法律に復帰するまで、我々は安穏としてはならないし、手を緩めてはならない」と、副大統領はツイッターで書いた。


これに対して、女性の選択権を支持してきたリベラル派で民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は、「共和党が支配する最高裁」が、共和党の「暗く、極端な目標」を実現したと批判。


ペロシ氏は、「アメリカの女性たちは今日、自分の母親よりも自由が制限されている」、「この残酷な判決はとんでもないもので、あまりにつらすぎる」などとツイート。


アメリカの権利団体「アメリカ自由人権協会(ACLU)」は、「これがいかにひどい瞬間か、否定しない」とツイート。「裁判所が何と言おうと、誰も自分の意志に反して妊娠を継続させられるべきではない(中略)中絶は私たちの権利だ。そのための闘いは決してやめない」と書いた。


(英語記事 Roe v Wade: US Supreme Court strikes down abortion rights)


キリスト教、それの一部の原理主義と呼ばれる(コンサバティブ・クリスチャン)の教えに対する解釈で、多くの女性が、人生の選択肢を奪われ、子供を産む機械としての人生を強要される。季節の移動で、NYから、南に向かいその公道沿いには、大きな看板で、”中絶は罪” ”中絶は殺人””キリストの意志”だのという文字が並ぶ。宗教による理念を国家が法で行うなどという、もうなんの論理性も人権意識もないことを声高にさけぶ。その状況で、生ざるを得ない状況に陥った女性たちに、どういうケアを行うのかといえば、”神が望まない”というだけで、なんの救済の制度も提案しない。


日本の家父長制復活論者や、あるいはトンデモ親学に近しい。こういう人たちは、結局女は家にいて子育てして、床を磨き、夫と神に尽くせと言っているだけ。ちょっと前まで日本も女に学問は必要ない、などと公言されていたことを思い起こされる。


コンサバティブ・クリスチャンの女性たちが最も嫌うのは、ヒラリー・クリントンやナンシー・ペロシのような女性だ。


自分の体で起こることを自分の意思で決められないなどという不条理がまかり通っていいはずはないのだ。神でも最高裁判事でも、そんな権利はない。


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