密接な関係にある他国から

アメリカと日本の社会、文化、日常感覚など、下から目線でつなげてみる。

大江健三郎氏の沖縄公演を聞く−根源的倫理・ミラン・クンデラ+タルコフスキー

大江健三郎氏、沖縄公演を聞く−9条は文化
http://artrino.muragon.com/entry/130.html


この続きですが、ちょっと拙い芸術論?(w)。
大江氏の著作は,若い頃夢中になって読んだ。”芽むしり仔撃ち” ”飼育” ”性的人間”
”見る前に飛べ”など。しかし理解していたというより、背伸びして読んでいた。淡々と層を重ねるような内省的世界、そこに、”何か”を求めている、その世界の温度感が好きで読んでいた。きっともう一度読み直したら全然違っているのだろう。恥ずかしながら、この公演の主眼−沖縄ノート,広島ノートは読んでいないので,読んでみたい。


公演はもちろん沖縄について、安倍政権の横暴について語られているのだが、私は少しずれてしまった。大江氏がとても好きな作家、ミラン・クンデラに言及されたからだ。クンデラはチェコスロバキアに生まれ、1979年にチェコスロバキア国籍を剥奪され、1981年にフランス市民権を取得した文学者。私はこの人の著作に、やはり淡々と日常が深化し層を成し常に内省的に語られる文体の中”何か”をもとめて,探している。赦し?自己を試している?そういう物を感じていた。


大江氏は、クンデラが、後世に残さなくてはいけないものを、『根源的倫理』であると云っている,と述べた。そうか、”何か”は”倫理”、求めていたのはその”根源”あるいは、時代に価値観に左右されない、為政者,支配者によって作られた倫理観ではなく、
人間が本来,最も無垢な心に持っている”倫理”。


表現をする者は、文学者であれ,芸術家であれ、作曲家であれ、いや,演奏家であっても,その選曲解釈に置いて,自分自身の求めている”何か”が通底に流れている。生と死の闇のエロスを追い求める者もあり、既成概念を切り裂く断面を追求する者もある。絶対の自由とか、無為、無意味を追求する芸術家もいる。その中で、”倫理観”を追求する者は、人間存在の肯定、人類に対する最終的な信頼の求道者である。


もう一人同質の”何か”を追い求めていると感じた,芸術家に、アンドレ・タルコフスキーがいる。ソ連の映画監督である。「映像の詩人」と呼ばれ、叙情的とも言える自然描写、とりわけ「水」の象徴性を巧みに利用した独特の映像美で知られる。深い精神性を探求し、後期から晩年にかけて、人類の救済をテーマとした作品を制作・監督する。表現の自由を求めてソ連を亡命し、故郷に還ることなく、パリにて54歳で客死する。(by Wiki)
自分の”本心”に対する懐疑と恐れ、その赦しを求めている先にある”神”と云う概念。自分の本当に求めている者が具現化して現れる”惑星ソラリス”(これも東欧ポーランドの作家スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』原作)、時空間が捻曲がり,案内人無しではたどり着けない,祈りの部屋,そこへ入った瞬間に心の奥底の本当の願いが叶えられる”ストーカー”、自分のすべてを投げ出す事で,核に破壊された世界を救おうと(妄想?)する、”サクリファイス” この人の求める”神”は大江氏やクンデラの”根源的倫理”と通じていると思う。


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タルコフスキーの映画は常に希望の予感が提示されている。サクリファイスの全てを破壊する主人公は,息子と一緒に,枯れた木を大地に植え、毎日水を運んで与えていた。彼の全てが壊れた後、幼い息子は、一人で,水を運び,水をやる行為をつづける。


クンデラはチェコスロバキア共産主義政権に抵抗した作家として認知されているが、西ドイツに亡命しスパイとして諜報組織に加わった元チェコスロバキア軍兵士がプラハに潜入した際、その立ち寄り先を知人から聞かされたクンデラが当時のチェコスロバキア共産党秘密警察に密告し、その結果スパイが逮捕されたとする記録が2008年10月に明らかになった。クンデラ本人はこの件について「作り話」と全面否定し、秘密警察による文書の偽造・捏造の例があることから真偽は定かではないが、クンデラの作品には裏切りの物語が多く、特に上述の小説『冗談』では友人の告発によって大学を追放され、鉱山送りにされた主人公が描かれるなど類似点が多いため、これらは実体験による者,と云う憶測も流れている。(by Wiki)    真偽は解らないが,この作家が後世に残したい”根源的倫理”は、加害者、協力者、あるいは自覚的傍観者 としての大きな痛みがともなっている。これは、戦後多くのドイツの国民が抱えて来た痛みと苦さでもある。
私たち日本人はこの加害者としての痛みも苦さも、無自覚に過ごして来たように思う。だから、安倍晋三のような,隣国の痛み、苦悩の歴史を一顧だにせず無知で独善的な歴史修正や,貧困や社会不安の中にいる国民をさらに利用搾取する政策、沖縄の人たちに対する差別的権力行使、ここには”根源的倫理”どころか、一般通念の倫理さへ、さらさらない。
大江氏がこの公演で、後世に遺す”根源的倫理”に触れたのは,私たちがこの倫理を発見せず,失うかもしれない危機感からなのだと思った。安倍政権の表面的な口車に乗り,唯々諾々と一部の人間に付き従っていては、”後世に遺す根源的倫理”は失われる。80才の文学者からの、今が自覚を促すると時と云う,深い警鐘であると思った。


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