密接な関係にある他国から

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差別落書きの少年に読書の判決ー米・東バージニア州

東バージニア州は、NYからフロリダに行くルートのちょうど中間地点で、アメリカで一番貧しい州と言われたいる。主産業は酪農で、起伏のあある広大な草地にてんてんと牛が草を食んでいる。ヒルビリーと呼ばれる人々が多く住んでいる閉鎖的で保守的、経験なクリスチャンでもある住民たちは、政府からの関与を嫌い、社会保障の充実を政策にあげる民主党を忌み嫌っている。


この州に入ると、カーラジオから、絶大な人気を誇る極右ラジオのパーソナリティーの独特のしゃべり口で、ヒラリー・オバマの陰謀説が流れている。


もちろん大多数が、トランプ支持者である。しかし排他的ではあるが素朴で敬虔なキリスト教徒というのが大多数である、しかし、白人至上主義者 狂信的なキリスト教原理主義者も跋扈する。
ヒルビリーの人々は、現代社会を拒否し、読書を嫌い、ただただ自分たちの習慣を守る。そして子供達もそういう環境で育ち、その結果、自分と違う人間に対して敵意を持つこともしばしばある。これは、環境と教育の問題である。こうした環境の中、人生の選択、可能性の見つけ方を知らない、出口のない若者のルサンチマンが招いた、アフリカ系の学校に対するヘイト落書きに、裁判所が素晴らしい判決を言い渡したので、紹介したい。

(CNN) 米東部バージニア州でアフリカ系米国人の子どもが通う学校の校舎に人種差別的な落書きをしたとして器物損壊などの罪に問われた10代の少年5人に対し、裁判所がこのほど、読書や映画鑑賞を通じて世界観を広げるよう命じる判決を言い渡した。
検察によると、16~17歳の少年5人は昨年9月30日、同州アシュバーンの学校の校舎に侵入してナチス・ドイツのかぎ十字や、わいせつな内容、「ホワイトパワー」などの落書きをしたとして、器物損壊と不法侵入の罪で起訴された。
現場は地元のアフリカ系米国人の子どもたちのために1892年に設立された教会付属の学校だった。

被害に遭った校舎の周りで手をつなぎ、輪になる地元の人たち


判決は2月上旬、少年家庭裁関係地方裁判所のアベリーナ・ジェイコブ裁判官が言い渡した。


検察によると、判決ではハーパー・リーの「アラバマ物語」、エリ・ヴィーゼルの「夜」、チヌア・アチェベの「崩れゆく絆」などを課題図書に指定。この中から選んで今後12カ月かけて1カ月に1冊ずつ読み、感想文を提出するよう命じた。
読書に代えて映画を鑑賞することも認め、「シンドラーのリスト」「それでも夜は明ける」などの作品を指定している。
さらに、米ホロコースト博物館とアメリカ歴史博物館を見学して、自分たちの落書きがアフリカ系米国人の社会でどう受け止められたかに関する論文を書くよう指示した。
この内容は、連邦検察のアレックス・ルエダ検事が提案したという。元司書の母をもつルエダ検事は、こうした作品から戦争や差別について多くを学んだといい、少年たちにも学んでほしいと思ったと語る。「世界で人々がジェンダー、人種、宗教の名の下にどれだけひどいことをしてきたか、目を見開いてほしい」という願いを込めた。


差別や敵愾心は無知に由来する。そしてその無知により人生の変化に臆病になり、自分のアイデンティティーを脅かす、知性や教養を嫌い、敵視せざるをえない。


この少年たちに対する裁判所の判決は素晴らしいものだ。自己中心的な差別意識に凝り固まった大人たちとは違い、彼らには変化の可能性があることを信じたい。


知性は平和の糧である。今の国会があれだけ劣化しているのも、与党政治家も、官僚も本当の知性を身につけたこなかった、ただ物事を有利に回す小賢しさ、利益第一の効率の良い頭の鍛え方をしてきた故であると思う。


高校で教鞭をとる友人は生徒たちに、とにかく本を読め、と言っているそうだ。
彼女は今の子供達の想像力が平板であることをとても危惧している。


知性は知識を醸造して得られるものだ。ただ受験のための詰め込み教育では、知識は目的を達すれば流れ出てしまい、醸造されない。年号より、その時代を生きている人たちへの共感が大事だと思う。特に第二次世界大戦下の歴史的事実、凄惨な状態に置かれた人々の苦しみ、恐ろしさ、無念さを感じる想像力、共感力を持つことで、平和を願い続けられる。どうしてそうなったのかを学び考えることで、同じ過ちを避けられるだろう。
若い人たちに、人間の悲劇を歴史を通して正面から学んで欲しい。また大人も学び続けなくてはならない。このアベリーナ・ジェイコブ裁判官のように豊かな知性を持つ大人が子供達を導けるからだ。


アメリカの文学は、サリンジャー、アービング、カポーティーくらいしか読んでいない。アラバマ物語は原題”Kill Mockingbird-樫鳥を殺せ”でDさんの大オススメで映画を見た。アメリカ中部の人種差別・偏見を子供の目を通して描かれている。作者はトルーマン・カポーティーと幼馴染で、映画にも幼い彼が登場する。
エリ・ヴィーゼルの「夜」、チヌア・アチェベの「崩れゆく絆」は読んでいない。
ぜひ読んでみたい。


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